島田譲のわりとゆずる 第6回「知られざるサッカー選手のお金事情」
島田選手が“わりと譲ってしまうこと”、“気になっていること”などを気ままに綴る「島田譲のわりとゆずる」。
連載6回目の今日は、プロサッカー選手のお金事情がテーマです。
知られざるサッカー選手のお金事情
タイトルに釣られてクリックしてくれたそこのあなた、ありがとうございます。
最近は投資やお金に関する動画の閲覧数が伸びると聞いたので、今回は「お金の使い方」をテーマにしましょう。
サッカー選手ってどのくらいお金をもらって、どんなことにお金を使うんだろうってちょっと気になりますよね?
人の喧嘩や上裸をドバドバ世に流出し、婚姻届提出の瞬間や結婚式にまで常にアンテナを立てているあのモバアルZでさえ、選手のお金事情に関してはこれまで手をつけてこなかったのではないでしょうか。
本当ならアルビレックス新潟年俸ランキング!とかやったらモバアルの会員数獲得に大きく貢献できるのでしょうが、選手のお給料についてはどんなに仲良しでも共有しないのが選手間のルールです。シーズン前に発行される選手名鑑に乗っている選手の予想年俸もハッキリ言ってまったく当てになりません。逆にどうやってあの数字を算出しているのか聞いてみたいくらいです。と言うわけで、選手同士でもお互いの収入については知り得ないので、今回はそのお金をどのように使っているのかにフォーカスして話をしていきます。
サッカー選手と一括りに言っても、お金の使い方にはさまざまなタイプの選手が存在します。それでもやはりサッカー選手と言えば、皆さんのイメージ通り、車です。サッカー選手には異様に車好きが多く、車にお金を使う選手が多いです。僕が幼い頃、鹿島アントラーズのクラブハウスに練習見学に行くと、選手用の駐車場に生まれて初めて見るような戦車みたいな車がズラーっと並んでいて、田舎者の僕には衝撃だったことを覚えています。アルビにも車好きの選手は多く、年に何回か車を乗り換えるような選手もいます。あとこれはJクラブあるあるですが、選手用の駐車場に並んでいる車を見ると、クラブの経済力や規模感、またはその成長度がはっきりと見えてきます。僕が大卒でファジアーノ岡山に加入した当初、選手の駐車場は地元のスーパーの駐車場とほとんど変わらない様子でしたが、僕が在籍した4年の間で都内のデパートの駐車場くらいまでに成長し、カッコいい高級車が並ぶようになりました。選手一人ひとりを見ても同じことが言えます。下のカテゴリーのクラブから軽自動車に乗ってステップアップして移籍してきた選手が、数年後には誰もが羨む高級車に乗ってステップアップしていく世界です。うちのクラブにもそんな選手がいます。盛岡ナンバーのお世辞にもカッコいいとは言えない車に乗って移籍してきて、年々(いや半年に1回?)車もステップアップし、今ではJ1でスーパーゴールを量産している選手が。このペースで行くと5年後、逆に彼に見合う車があるのかと心配なくらいです(笑)。
似たようなところで行くと、時計やバッグ、洋服やスニーカーにお金をかけている選手も多いです。サッカー選手はお洒落な人が多いので、身につける物に気を配っている選手がとても多いです。時計を買うためにお店に通ったり、スニーカーのネット抽選で盛り上がっている選手もいます。近所のコンビニにもスーツで行くという三浦カズさんや両腕に高級時計をつける本田圭佑さんも言っていましたが、プロである以上、常に周りから見られている意識を持って、自分の身だしなみに気を遣うことは大切です。僕はその辺が疎いので、部屋着みたいな格好でスーパーで買い物している時にサポーターの方に声をかけられてしまい、反省することも多々あります。以後気をつけます。
僕自身は車にあまり興味がないし、時計も使いこなせないアップルウォッチを3、4年使い続けています。洋服も快適で楽であることが最重要です。たまにはちょっと良い服を買おうと思いますが、「本当に必要なの?」と奥さんに言われると、「いらないかもな〜」と思い留まることが多いです(笑)。
では、何にお金を使っているのかと考えると、僕は経験や体験にはお金を惜しまないなと思いました。例えば、家族で旅行に行くときの費用とか、食事にはケチらずにお金をかけますし、自分が興味関心を持ったことへの学びや経験には迷わずにお金をかけます。これを何欲というのか分かりませんが、物欲の代わりにこういう欲が強くあります。数年前にとある学びのプログラムに参加するのに軽自動車くらいの値段を使う時は、さすがに奥さんを説得しましたが、値段以上の学びと経験ができたと満足しています。昨年はスポーツビジネスのスクール、今年は英会話の勉強に多くのお金を使っています。
また、自分の身体への投資にお金をかける選手も多いです。パーソナルトレーニングをしたり、高価な治療器具を買ったり、サプリメントや睡眠関連グッズにお金をかけるタイプです。車や時計にお金をかける選手が多いのは昔からのサッカー選手の特徴ですが、自分の身体にお金をかける選手が増えてきたのは、ここ最近かなと思います。それだけサッカーというスポーツの強度が上がり、フィジカル的な要素の重要性が増してきている証拠だと思います。アルビにも謎の治療器具や体に良いとされるサプリを買っては、チーム内で流行らせる健康オタクが数人います。身体が資本で健康第一のサッカー選手ですし、自分の選手としてのパフォーマンスや選手寿命にも関わる部分なので、大きなリターンを期待できる自己投資としてここにはお金をかけるべきだと思います。以前のコラムでも触れたと思いますが、僕はここに関しては拘りすぎるとキリがないので、取捨選択をしながら必要に応じて適度にお金をかけているという感じです。
あとは近年の社会的背景もあって、NISAやIDECOなどで投資をする選手も増えてきました。比較的若いうちにまとまったお金を手にすることができるサッカー選手にとって、そのお金をどのように運用していくかは非常に大切なテーマです。しかし、学生時代をサッカーに捧げた僕らのような選手たちは、社会の仕組みや経済について右も左も分からないままサッカー選手になることが多いので、投資に対しては消極的な選手が多い印象がありました。ただ最近は新NISAがメディアで大きく取り上げられたり、YouTubeなどで分かりやすく経済や投資の勉強ができるようになったので、少しずつそのマインドの変化がサッカー選手にも波及しているように思います。僕はプロ2年目くらいの頃に怪しい保険会社のFPに勧誘を受けたのをきっかけにお金の勉強を始めました。この若い選手への怪しい投資の勧誘もサッカー選手あるあるです。お金の教育をまったくされずに社会や経済の仕組みが分からないまま、まとまったお金を手にしたサッカー選手は彼らの格好の餌食です。僕は基本的に上手い話には裏があると思っているし、そんなにすぐに人を信用しないので、「絶対嘘だ」と思ってお断りしましたが、若くて素直な選手にとっては断ることが難しく、大きな問題に発展することもあるようです。若い選手の皆さん、くれぐれも気をつけましょう。
話がそれましたが、そのFPさんの怪しい保険の勧誘のおかげで、僕は少しずつ経済やお金について学び、投資を始めることになりました。安定思考で大きな賭けができないタイプなので、堅実にコツコツと積み立てながら長期的な目線で投資を続けています。この前の日経平均株価の史上最大の下落にはさすがに動揺を隠せませんでしたが、自分のスタイルを貫いた結果、少しずつ株価も戻ってきているのでホッとしています。
ここまで選手がどんなことにお金を使っているかっていう話をしてきましたが、僕は選手に限らず、お金の使い方には人の価値観や信念が垣間見えるような気がします。それは正解不正解ではありません。僕のタイプはどちらかというとサッカー選手の中では少数派。元々ネガティブで安定思考なので、派手な買い物はあまりしないし、仮想通貨よりもコツコツと積立投資をします。サッカーにおけるプレーや人生の価値観がそのままお金の使い方に表れてしまっているなと思います。たまにはその価値観に背いて、派手な買い物をしたり、大きなギャンブル(パチンコとかって意味じゃないですよ)に出たくなることもありますが、それで後悔する自分が目に見えるし、逆にそこから大きな喜びを感じないことも自分自身が一番良く分かっています。なので、「サッカー選手のくせに面白くないなー」と思われるかも知れませんが、自分に嘘はつけません。きっとこのスタイルが変わることはないと思います。
自分が何にお金を使っているか、何にお金を使う時に喜びを感じて、何にお金を使うと罪悪感を覚えるか、そんなことを改めて考えてみると、自分自身をより深く知ることができる気がします。キャッシュレスが普及し、お金を使うことに対する意識が希薄になっている今こそ、皆さんもお金の使い方を通して自分自身の人生について深く考えてみてはいかがでしょうか。