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宮崎から直送!【アイノモト vol.39】堀米 悠斗

新潟歴9年目の堀米悠斗選手。削るのがもったいないパワーワードが多かったので、今回はインタビュー形式でお届けします。

 

本当の実力が出るのは、リーグ戦。あえて発信した「危機感」

 

---新潟9年目のシーズンになりました。

 

うん。長いっすね。

 

 

---契約更新のお知らせに「J1でさらに上を目指しタイトルを穫るため、生き残るために何が必要かを考えると、今は喜びより強い危機感を募らせています」とありました。あえて「危機感」という言葉を選んだのは?

 

「いや、もうそのまんまです。やっぱり、どこのメディアでもルヴァンカップ決勝のことを聞かれますし、クラブとしても過去最高の準優勝という結果で、いい思い出にはなりました。

 

でも、チームの本当の実力が出るのは、リーグ戦だと思うので。あれだけギリギリ、最終節でなんとか残留という形だったことへの危機感は、強烈に自分の中で残っていて。『このままだと落ちるな。来年は本当に危ないな』って。選手は多分、みんな感じているとは思います。

 

クラブとして、どういう思いで、今年やっていかなきゃいけないかは、サポーターの皆さんにも共有したいなと思ったし。フロントスタッフも、おそらく見ているだろうから、アルビに関わるすべての人が、まずはそういう思いで、準備期間から取り組んでいく必要があるかなと思って」

 


---いろいろな人に届けるための、意識的な発信ですね。

 

「そうですね。選手に直接言わないことも、メディアを通して伝えるとか。誰に、どう届けるべきかは、常に意識しています。特にサポーターに対してですね。自分たちの現状と、こういう姿勢で自分たちはいるから、サポーターにはこういう形で見ていてほしい、といったこと。コールリーダーの方とは、試合後に、去年だと4回くらい、お互いの思いをぶつけ合って、喋っています。

 

ただ、それが届かないサポーターの方もいる。個人のSNSでの発信だと、どうしても限界があるので、マスメディアを通した方が、多くの人の目にも止まるだろうし。そこも自分の言葉で、しっかりと届くように意識しています。新潟のメディアの皆さんとは、いい関係を築けていると思うので、本当にありがたいなと思っています」

 


---これまで堀米選手が、いいときだけじゃなく、辛いときでもしっかり向き合ってくれてきたからこその、信頼関係ですよね。

 

「そうですね。嘘はつきたくないというか。去年の悪かったところ、チームの状態が良くなかったところなど、自分が感じていたことは言うべきだなと思うし。そこで『今年はこうしたい』という改善策まで話せれば、というのはありますよね」


 

『変えなきゃいけない』という危機感があるからこそ、素直にトライする

 

---今季、選手もスタッフも大きく入れ替わった中で、チームの雰囲気は変わりましたか?

 

「オフ・ザ・ピッチでの雰囲気は、そんなに変わっていないと思います。先輩・後輩っていうのは、ないわけじゃないですけど、すごくいい雰囲気は継続している。

 

ただ、ピッチの中に関しては、そういう甘さみたいなものを排除して、ダメなものはダメだし、ゆるいものはゆるいと言い合えるような選手が増えてきたのかなと、キャンプで感じています。

 

キモさん(樹森大介監督)の練習の雰囲気も、去年よりリラックスムードの時間は減っている。アップから割と目を光らせている感じがあるので、それは徐々につかんでいくというか。アップに関しては、コミュニケーションを取りながら楽しくやってもいいんじゃないかなとは思っているのですが。どういう雰囲気をキモさんが望んでいるのかは、もう少し時間が経てば、分かるかなと思います」

 


---樹森監督は、キャンプ最初の3週間は、足りないところにフォーカスして、そのあとは自分たちのスタイルに取り組むと。それは、最初に寄り添って、途中から『やっぱりダメ』っていうほうが、逆に良くないと思っているというのを伺って、伝え方を考えていらっしゃるのだなと思いました。

 

「伝え方のところは、探り探りですね。思ったよりも、うちの選手が正直なリアクションをする、求めたことに対して表現しようとしすぎるから、『ちょっと強調しすぎちゃったかな』と、ミーティングでも言っていました。

 

それはやっぱり、みんな『自分たちを変えなきゃいけない』という危機感があるからこそ、要求に対して、素直にトライする。その思いがちょっと強すぎるので、キモさんも『いや、もうちょっと去年の感じで、ボールを持ってもいいんだよ』みたいな」

 


---足りないところとして、より前への意識を強調する中で、攻撃が速くなりすぎたという。

 

「そうですね。練習試合の1試合目の金沢戦では、結構そういうシーンが多かったですけど、次のいわき戦ではバランスが改善されていた部分はあるので。練習試合や紅白戦を重ねるうちに、前へのアクションをどれだけ使うかというバランスみたいなものは、徐々につかめていくんじゃないかなと思います」

 


---練習のテンポも速くて、ハードですよね。

 

「そうっすね。1対1の場面がすごく多いので、そこは今までとは違うなっていう。

 

リキさんのキャンプも、きついっちゃきつかったんです。ただ、新型ウイルスの集団感染による活動休止とか、雪とか、いろいろあって、思うようにやれていなかった。今年はそういったアクシデントはなく、練習試合もちょっとずつタイムを伸ばして、順調に進めてきてもらっているなと思います」


 

---アクシデントは、初日の地震ぐらいでしたね(宮崎県で震度5弱の地震が発生)。

 

「地震は、そうっすね。びっくりしたけど、あれで厄を落とせたんじゃないかな」

 


前線の選手のアクションに対して、配球する側は、そこを見逃さないこと

 

 

---今季は『史上最高へ』という目標を掲げている中で、どんなチームになりそうですか?

 

「このチームのスタイルが明確になったのが、アルベルのときだとすると、そこに戻るわけじゃないと思っています。すごく抽象的な言葉で言うと、スペインっぽいサッカーみたいなのは、キモさんの求めているものとは違うんだろうなと。

 

今は単純に、試合に出るために、キモさんの求めるものを素直に表現していきたいなと思っています。前線の選手のアクションに対して、配球する側になったときには、そこを見逃さないこと。前線の選手は、背後へのアクションを重ねることをすごく言われているので、パサーとしては、その重ねたアクションの中から、しっかり配球先を選ぶこと。 

 

だから、ボールの置きどころも大事だし、選ぶための時間が自分には必要だし、立ち位置が大事になる。そういったところ、個人戦術みたいなところが、すごく大事かな。いいパスを出すために、どこに立って時間を確保するのか。それが、より前であればあるほどいいけれど、(敵も多いので)難易度は上がるみたいな感じです」

 


---去年まで、ゆるっとパスをつないで相手を食いつかせながら、ズバッと堀米選手の縦パスでテンポが変わる、みたいな感じもありましたけど、そういう“緩急”が、“急急”という感じなんですか?

 

「いや、それが多分まだ、お互いが思っているスピードじゃないのかな。でも、結構それを要求されるから、そこにトライしたくなって狙いたくなっちゃうんだけど、 『いやいや、全部狙わなくていいよ』というのが、今のキモさんの状態。でも俺らは『いや、でもちょっとトライしてみたいっすよね』みたいな。ミスになってもいいから、成功体験を増やしたいな、みたいな状態なので。

 

目指すサッカーは、もちろんボールを保持しながら、サイドも変えながら、いい攻撃の“入り口”を見つけていく。そこは、基本的には変わらないと思います」

 


---整えていく前に、まずは、どんどんやってみている段階ということですね。

 

「そうですね。特に、サイドバックがボールを持って時間があるときに、ポケットへのランニングをする人と、それによって空いた真ん中のバイタルエリアで受ける人と、それに食いついたセンターバックの奥を狙う人と。前線の選手は、その3つのアクションを重ねようと言っているので、パスのタイミングが合えば、相手はどこかのマークに付ききれないと思うので、その選択肢から、ちゃんと選べるように。視野の確保は難しいけれど、面白いなと思いますね」


 

---頭にも体にも新しい刺激が入っている感じでしょうか。

 

「いや、真新しいことではないんで。それがやれれば1番いいっていうのは、みんな分かってはいましたけど、ちゃんと言語化して、狙いを持って、そこにトライしていくのは本当に難しいので。だからこそ、やりがいがあるなと思います」

 


---ピッチ内で、受け手と出し手が積極的に話していますよね。

 

「やっぱり言っていかないと、まだ分かり合えていない部分もあるので。相手がボールを奪いに来ていないなら、GKがずっとボールを持っていてもいい。パスも、人に届けるというよりは、スペースに置いてあげたり。マンツーマンで守られているときにはなおさら、弱いパスで相手を引きつけるっていう感覚的なところを伝えて。すぐにできるとは思わないですけど、アイデアの1つとして、今フィールドプレーヤーが思っていることをGKに伝えることは、練習試合のいわき戦では多かったですね」

 


---そうやって、チームつくり上げている段階なんですね。

 

うん、そうっすね。メンバーがここ数年で1番変わったので、もう1回伝えなきゃいけないし、僕自身、新しいものも取り入れたいと思っているので。(森)昂大とも、徳島でいろいろなビルドアップを経験していると思うし。そういったやり方とかアイデアもしっかりと取り入れながら、やっていきたいなと思いますね」


 

---新加入選手も、皆さん好青年ですよね。

 

「そうっすね。伝えたいことは、すぐ伝わる感じもあります。(落合)陸も本当に賢い選手だと思うし。(若月)大和も若いうちに海外に行っただけあって、すごくサッカーを知っている選手。ただ、そのパワーの使いどころとか、そこで追っかけても1人じゃ取れないのにな、みたいなところはあるので、ちゃんと伝えながら。でも本当、理解度の高い選手が揃っているなと思います。

 


今は本当に、エラーが出た方がいいと思っています

 

---もうすぐ開幕です。堀米選手は、どのような意識でスタメン競争に挑んでいますか。

 

「そうっすね。直接アシストというより、アシストの1つ前みたいなプレーが多くなるイメージがあります。それこそ、ポケットに走った選手をしっかりと活かすようなパスとか、バイタルエリアに差し込むくさびのパスとか。1本で一気にスピードが上がるような、キーになるパスが出せれば、チームの攻撃はうまくいくと思います。

 

あとは、より前からのプレスとか、奪われた後に奪い返しに行く迫力が足りていないと言われているのですが、自分は後ろの選手のカバーを信用して行くべきだし、逆に前の選手にしっかりと行ってもらうために、自分が次で奪えるような準備も必要だと思っています。

 

僕自身は、押し込まれた際の守備よりも、前でアグレッシブに奪いに行く方が向いている。どちらにしても、自分の特徴が出しやすいサッカーだと思うので、それを楽しみながらやれればいいかなと思います」

 


---非公開練習が多くて、まだ全貌が見えてないところもありますが、そういう意味でも開幕が楽しみです。

 

「そうですね、俺らも、全貌はまだ見えていないんじゃないですか」


 

---練習試合や紅白戦をやるごとに、すり合わせて、直しての繰り返しですよね。

 

「そうですね。やっぱり実践で出た課題は、すごくリアルな課題だと思うので。今は本当に、エラーが出た方がいいと思っています。やっぱりサポーターの方は、練習試合の結果を見て、例えば、金沢に負けて『おいおいおい』みたいなのはあると思うんですよ。でも、ミスが出ないように、失点しないように、ごまかしながら勝って、いざ開幕して、ごまかしがきかなくなって負ける方が絶対に嫌なんで。

 

それは去年、強く思ったことで。去年のキャンプでは、割と練習試合でも良い結果が出て、最初の練習試合でガンバ大阪にも勝って、『ガンバ、あんまりよくないっすね』みたいなことを言っていたら、すごい上位に行っていたから。

 

だから、キャンプでの結果は、まったく当てにならないと思っているし。どれだけ自分たちが意図を持ってトライしているか。そこに尽きると思うんで。もちろん、それで勝てるのがベストではあると思うけれど、 ただ試合をやって『今日勝ったね、よかったね』で終わるよりは、負けてとか、失点して『このエラーが出たんですけど、どうしたらよかったですか』っていうことをやっていくのが、今の練習試合の目的。優先順位はそこが高いかなと思います」

 


---今季のサッカーなら、セカンドボールから堀米選手にもシュートチャンスがありそうですね。

 

「そうですね。今年の目標は、点を取るというのも1つあるんで。そこまで入っていく運動量も意識しながらやれればなと思います。怪我なくね」