【アイノモトvol.13】 長谷川元希コラム
復帰後、毎試合必ず決定機を演出中。
ファンタジスタが帰ってきました。その名は、長谷川元希選手。
あらためて、ファンタジスタとは?
日本サッカー協会のnote「毎日使えるかも? JFA的サッカー用語辞典」によると、
誰もが予想しないプレーを見せ、観客を魅了する選手のこと。典型的なストライカーよりも、パスやドリブルなどで創造性や技巧を持つ選手を呼称する場合が多い。(抜粋)。
(出典:『SAMURAI BLUEの中の人』https://note.jfa.jp/n/ndc095c6c6c52)
今の新潟において、まさに元希選手にあてはまる表現ではないでしょうか。
5月11日のJ1第12節・浦和戦での接触プレーで右膝を傷めて離脱し、6月16日のJ1第18節・鹿島戦で、試合に復帰しました。
その鹿島戦。80分に途中出場すると、3分後に得意の右アウトサイドパスでダニーロゴメス選手を背後へ走らせ、松田詠太郎選手の決定機が生まれます。84分には、中盤でパスを受けて落ち着かせると見せかけ、左足でスパーンと背後へパス。ダニーロゴメス選手がシュートまで行きます。90分には、エリア内でこぼれ球に反応して自らループシュート。得点は生まれませんでしたが、10分間で3つもファンタジスタ的なプレーで魅了しました。
「ベンチから見ていて、相手がダニーロを嫌がっていると感じたので」と、すぐさま正確なプレーで表現しました。
その後も第19節・川崎F戦、第20節・広島戦、第21節・札幌戦と、出場した試合で必ず決定的なパスを演出しています。札幌戦での71分の小野裕二選手へのパス(シュート時、膝負傷)、85分の島田譲選手へのパス(シュートは惜しくもポスト)も、サポーターの皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。
浦和戦で受傷した瞬間、うまく衝撃を逃がしたことによって、約1カ月の離脱で済んだそう。「もうちょい上だったり、逃がせていなかったら、前十字靭帯や半月板をやっていたと言われた」とのこと。これは、不幸中の幸いでした。
松橋力蔵監督も「部位が部位だったので、怖さと戦わなきゃいけないのかなと思って見ていましたけど、ボールを蹴り始めてから現場に100パーセントで復帰するまで非常に早かったですね」と驚く回復ぶりを見せました。
「連戦続きの中で、まずは離脱して申し訳ないなっていう気持ち。プラス、今まで自分が出ていたポジションで、チャンスを得た選手が結果を残していることも多々あったので、チームは勝ってうれしかったですけど、焦りや悔しい気持ちもありました。もちろんチームスポーツですけど、そういう気持ちは必然的に出てきてもいいのかなと思いますし、それが自分のリハビリ期間にもいい方向に繋がっていったと思います」と振り返った元希選手。早くピッチに戻りたい思いを抱えながら、同時期に負傷していた長谷川巧選手や宮本英治選手らと「誰が一番早く復帰するかな?とか話しながら、暗くならないように」リハビリに取り組めたことも励みになったようです。
一度もボールに触らず貢献した、広島戦のビューティフルゴール
ボールを持てば何かを起こす。見ている人たちがワクワクするようなプレーを見せてくれる長谷川元希選手ですが、実は復帰後、得点に関与したのは、ボールに触れていない第20節・広島戦のゴールでした。
皆さん、きっと何度も見直したであろう、今季もっとも新潟らしく、美しい崩しから決まった、11分の谷口海斗選手のゴール。自陣左のスローインを皮切りに、選手10人が21本のパスをつないで生まれたあの先制点にいたるまで、唯一ボールにタッチしていなかったのが元希選手でした。
マンツーマンディフェンスだった相手に対し、何度も動き直して最終ラインと駆け引きしながら、最後は塩谷司選手を引き付け、小見洋太選手から谷口選手へのパスコースを空ける助けとなっていたのです。
そのことを尋ねると、ふふふ、と解説してくれました。
トーマス・デン選手のパスから右サイドの崩しが始まろうという瞬間、元希選手は中央を駆け上がります。「最初は自分がボールを裏で欲しかったので走って。ボールは出てこなかったけれど、それで相手センターバックの注意を自分に引きつけられた。塩谷選手とマッチアップだなあと思って、自分がニアに出ていって合わせるより、引いた方がもらいやすいと思った」と、塩谷選手の視界に入ってから下がり、大きくボールを求めるアクションをします。
「結果論なんですけど、アクションしたことによって塩谷選手が止まったので、コースが空いた。オフ・ザ・ボールは自分の課題でもあったので、自分が関われたことはうれしかったですね」。
結果的に、うまくいったという経験をしたことで、「自分は足元でボールを受けたほうが、特徴を出せるタイプ。でも、そればかりだとうまくいかないこともある。フリーランの重要性を、あの得点シーンで再確認できたのかなと思います」と、これまでにない手応えをつかめたようです。
(興味がわいた方は、ぜひボールがないところに注目して、見直してみてください!)
※サンフレッチェ広島戦のハイライトはこちら!
やっぱり一番の武器は、右足アウトサイドのパス
「Xで流れてきた画像を見たら、チームで1番の数字だった」と喜ぶチャンスクリエイト数。それができるようになったのは、チームメイトが自身の特徴を分かってきてくれたからだと、元希選手は話します。やはり一番の武器は、右足アウトサイドのパス。左足で出すような軌道で、右足で出せるパスは、相手も読みづらいもの。
「蹴るときの置きどころが真ん中なので、『パスが出てくるタイミングがよく分からない』と相手によく言われます。仲間も、アウトサイドでパスを出すタイミングを感じてくれるようになった、ここでパスが『出てくる』と思って動いてくれるシーンも多くなったので。札幌戦の(小野)裕二くん、ゆずくん(島田選手)のシュートもそうでした」と、ここからもっと本領が発揮できそうな共通理解が進んでいます。右膝のリハビリ中に練習した左足の精度も上がっており、ますます多彩になったパスで、相手を惑わせてくれそうです。
同じトップ下では高木善朗選手も戦線復帰し、奥村仁選手らライバルとのポジション競争も高まります。「より自分を使ってほしいというところを見せないといけないですし、そこはプロで何年経っても、ギラつかなきゃいけないと思う」とアピールに燃えています。
「コンディションは、まだまだ上がると思う。ここからどんどん良くなると自分でも思えています。J1の強度にも慣れてきましたし、あとは得点、アシストという結果がついてくれれば、チームとしても、個人としてもすごくいい状態になると思うので、今はすごく楽しみです」とここからの抱負を語った元希選手。帰ってきたファンタジスタは、シーズン後半、プレーと結果で、たくさんワクワクさせてくれるに違いありません。